オススメ本のご紹介②タイラー・コーエン 大停滞 投稿者:林大祐

大停滞

大停滞

著者タイラー・コーエンは2011年2月にThe Economistが実施したアンケートで過去10年間で最も影響力のある経済学者の一人としてノミネートされた著名な経済学者です。2011年に日本で発売された本ですが、この本では世界経済の中心と言えるアメリカ経済が成長してきた要因を基に今後の世界経済の行方に迫っています。

著者は 3つの要因からアメリカ経済が成長してきたとのこと。
①無償の土地
イノベーション(技術革新)
③未教育の子供達

私が面白いなと思ったのは②イノベーションについてです。
2013年と私たちが生まれた頃を比べると本当に便利な世の中になりました。


…と思いましたが、よく考えてみると変わったものってなんでしょうか?
テレビ、冷蔵庫、車、飛行機、電話…。私たちが毎日利用している生活必需品は50年以上前からすでに存在していました。それぞれ進化はしていますが新しく生み出された物は実はほとんどありません。
そして、50年前と変わらず宇宙旅行はできないし火星に植民地も作れていないしリニアモーターカーも走っていません。
イノベーション(技術革新)のスピードが1950年代以前より遅くなっていると著者は指摘しています。
その昔、馬車が車や鉄道に置き換わったり、大陸の移動が船ではなく飛行機にとって換わった時代のような
革命的なイノベーションが停滞していて、それが世界経済の成長が過去に比べて鈍化してきている要因だとのこと。


唯一革命的イノベーションと言えるのがインターネットだと著者は言っています。
自分たちの身の回りにあるものはインターネット以外は基本的に子供の頃から変わっていないとも言えますね。
ただ、そんなインターネット革命に対して、著者は事業規模に対して雇用を生み出していないと指摘しています。


この点について少し自分なりに調べてみました。使っている皆さんも多いだろうFacebookと2013年5月10日時点でほぼ同じ時価総額三井住友フィナンシャルグループの従業員数を比べてみると、Facebookが4900人に対して三井住友フィナンシャルグループは6万5000人と10倍以上の従業員を抱えています。確かに雇用を生み出していないと言えるかもしれません。これを良いとするか悪いとするかは難しい所ですが…。


現在絶好調のニューヨーク株式市場は5月10日に史上最高値を更新しました。一方、改善傾向が続いていますが失業率は
まだリーマンショック前の水準には戻っていません。


日本でも株価が上がりメディアで話題になることが増えましたがやや熱狂ぎみではないかと個人的には感じています。
世界経済はタイラー・コーエンの言う大停滞期なのか、それとも新たなイノベーションにより停滞から抜け出したのか、
時間が経ってから振り返るとまたこの本の面白さがでてきそうなので、1年後に読み返してみようと思います。