オススメ本のご紹介 6 『乳と卵 川上未映子』 投稿者:林大祐

乳と卵

乳と卵

最近小説はあまり読まなくなってしまいましたが、現代作家の人では印象に残っている川上未映子さん。
なぜ印象に残っているかというと、文体が独特なのに加えてとても綺麗な人なので…
と読んだ動機は少し不純ですがとても良い本でした。2008年、第138回芥川賞受賞作品です。


まず読む人のつっかえ棒となるのは関西弁と句読点の打ち方が
変則的な文体。特に、句点(。のこと)が少なく、
文章が終わりそうなところで終わりません。なかにはこの独特の
文章に抵抗を感じる人もいるかもしれません。


私は谷崎潤一郎の「春琴抄」で句点の少ない文章を読んだことがあったので
あまり抵抗はありませんでした。むしろ慣れればリズムがよくて
スルスルと読めてしまいます。スルスルいきすぎて大事なところも読み飛ばしそうになるくらいで
加速しすぎないようにブレーキをかけながら読みました。
芥川賞作品といっても、登場人物は3人で決して難しい言葉がでてくるわけではないので気楽に読めると思います。



あらすじを書いてしまうと読む人がつまらなくなってしまうので詳しく書きませんが
よく喋る親と言葉を発しない子の、通じ合えない親子のさびしい距離が
ぶわっと一気に縮まる終盤はちょっと泣きそうになってしまいました・・・。


反抗期のとき、久しぶりに親戚の家に母親と行って
一緒にいるのも嫌だからむすっとしていると、場を取り繕おうとしている
のか母親が必要以上に話しかけてくる。それにまたイラっとして
余計にむすっとする。そんな経験ありませんか?
理由はわからないけど母親を肯定できない、思春期の感覚を読んでいて思い出しました。

面白かったですよ〜。