オススメ本のご紹介13『思考の整理学 外山 滋比古』投稿者:林大祐

この本が発売されたのは1983年、今から30年も前ですがずっと売れ続けているベストセラーです。

著者によると人間にはグライダー型人間と飛行機型人間がいて、グライダー型は受動的に知識を得る、飛行機型は自分で物事を発見、発明する人のことを言うそうです。そして両者は1人の人間の中に同居しているとのこと。


学校という場所はグライダー型人間を作るのには適しているが、飛行機型人間を作る努力はほんの少ししかしていないため、飛行機型の人間というのはほんのわずかしかいないそうです。ただ、とにかく飛行機型人間になれば良いというわけではなく、グライダー兼飛行機のような人間にならなければいけない。バランスが大事ということですね!



自分で飛べない人(グライダー型人間)はコンピューターに仕事を奪われるなんて恐いことも書いてあります。しかも30年前に…。



さて、肝心の思考の整理ですが、著者は「思考の整理とはいかに忘れるか」であると書いています。


ヨーロッパのことわざで「見つめる鍋は煮えない」という言葉があります。この本にも再三に渡り出てくるのですが、「何かについて考えるときに、一つのことをじっと考えていてもよい発想はうまれない」というような意味です。
料理をするとき目の前の鍋を気にして、火加減を変えたり、蓋を開け中を覗いているとかえって、煮えるのに時間がかかってしまいます。それよりも、火にかけてから他の作業をしていれば勝手に煮えてくれます。



具体的な方法としては「思いついたアイデアをとにかくメモを取る→しばらく放っておく(寝かせる)→忘れる→メモを見返す→面白くないメモが見つかる→面白くないものは消去していって残ったものが名案となる可能性が高い」と書いてありました。


なるほど〜という感じですね!これは実践の価値ありです。



ただし、アイデアを思いついたとき、うまくいかないのではないか、自分はダメなのではないかとは間違っても考えてしまってはいけません。思考はとてもデリケートなため、なにごとも消極的に考えるとできることもできなくなってしまいます。そして、自分の考えに自信を持つだけでは不十分で、他の人の考えにも肯定的でなくては本当に良いアイデアは生まれないそうです。全面的に相手を否定してしまうとやられた方は立ち上がる元気がなくなります。優れた指導者、教育者はどこか相手の良い所を見つけて道をつけておく。実際に優れた教育者である外山先生が言っていることですから間違いないですね!


また、外山先生の専門は英文学なのですが、外山先生には国文学、中国文学が専門の30年来の親友がいるそうで、何かあれば3人で集まって話しをするそうです。話しといっても毎回難しい話しをするというわけでもなく、雑談程度の軽い気持ちでリラックスして話す。同じ専門の人間同士では話しが批判的になって面白くないためこういった場がアイデアを生み出す土台の一つになっているんですね。



外山先生は「努力をすればどんなことでも成就すると考えるのは思い上がりである。努力してもできないことがある」と断言しています。何事もすぐ実現することはなく時間が必要。



確かに、どんなに努力しても人間は500歳まで生きることはできませんよね。かといって努力しないでいてはなにも実現はできませんね。



物事を考えるうえでいろんなヒントが詰まっている本でとても面白かったですよ。