オススメ本のご紹介14『医薬品クライシス 佐藤健太郎』投稿者:林大祐

医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)

医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)


全世界で78兆円、国内7兆円の巨大市場を持つ医薬品。 医薬品メーカーで研究職をしていた著者により内部事情がわかります。薬が過剰に嫌われているという点は個人的に共感できました。世間一般に、薬を飲むと副作用がこわいとかクセになってしまうと思っている人も多いのではないかと思います。



「危険な薬」のイメージのある、インフルエンザの特効薬であるタミフルタミフルを服用した10代の患者が異常行動により死亡した事件は記憶にある人も多いのではないでしょうか。本では服用による死亡者は20人にのぼると書かれています。



しかしこの事件でほとんど報道されることがなかった重要な数字があるそうです。タミフルの服用者数です。タミフルが国内で発売されてから事件が起きるまでタミフルを服用した人の数は約4000万人と言われています。このうちの20人が死亡したとするとその確立はおよそ200万分の1。これは交通事故の確立およそ2万分の1、飛行機事故の確率およそ50万分の1と比べるとはるかに低い数字です。果たして本当にタミフルは危険な薬といえるのでしょうか。



そしてなにより、どれだけの効果があるのかを報道されるべきであると書かれています。2009年猛威をふるった新型インフルエンザのパンデミックタミフルの積極投与をしないアメリカと積極投与をした日本で大きく結果がわかれたそうです。日本での総患者数740万人に対し死者は53人。アメリカはというと総患者数2200万人に対し死者は約4000人にのぼりました。死亡率にして約25倍になるそうです。この差は無視されるべきものではありません。



もちろん数字だけで単純に比較するわけにはいきませんが、こういった報道の偏りは日常に満ち溢れていると思います。そういえばここ2、3年はタミフルを服用して異常行動をおこしたとか死亡したというニュースは出てきませんね。現在はタミフル以外にもインフルエンザ治療薬は複数ありますが、医療現場では変わらず処方されています。ニュースや新聞を見る側としてもひとつ俯瞰的に事実を見れるようにならなければいけませんね!


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